イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第35章 あんたが望むなら 前編〈徳川家康〉
「匂袋?」
中には、良い香りの匂袋が入っていた。どこか落ち着くその香りに、は家康の意図を図りかねる。
――ここ数日。
は全く眠れていなかった。
眠ると悪夢ばかり見てしまうからだ。
眠る事が恐いとさえ思える。
自分でもまずいとは思っていた。
身体に変調を来し始めていたからだ。
家康が言っていた事は、恐らくこの事だろう。
「……眠りたくない」
でも――……
まだ日も高く、明るい昼間。
今なら確かに、夜ほど恐くない。
「少し、眠れそう……」
小さくそう呟いて、は布団を敷き、寝間着に着替えて横になった。
枕元に匂袋を置いて、そっと瞼を閉じると、いつの間にか眠りに落ちていた。
……………………
………………
夜の帳が下りる頃。
城の者達が寝静まる中、家康は自らの御殿ではなく、安土城に居た。
昼間のの事が気になっていたからだ。
(匂袋を渡したとはいえ、素直に寝てるとも限らないし……一応ちらっと様子だけ見に行こう)
面倒だけど、仕方無い。
これも御館様の命令だ。
そう己に言い聞かせて、の部屋の前まで来ると……
中から、魘されている声が聞こえてきた。