イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第35章 あんたが望むなら 前編〈徳川家康〉
その予想は大きく外れ、逞しく温かい何かに抱き留められた。
耳のすぐ近くで、ほっと小さく息をつく音が聞こえる。
「……あんたって、本当にあぶなっかしいね」
「え……?」
目を開けて見上げると、間近に見えたのは家康の顔。僅かに眉根を寄せて、さも迷惑そうな表情をしているが……
言葉だけは、どこか優しく耳に残った。
「ご、ごめんなさい。ちょっと立ちくらみしちゃって……。ありがとうございます」
「……」
すると、家康は黙ったまま、の手に触れた。
突然の事に驚き、は目を見張る。
家康はの動揺を無視して、額、目元と触れていき、ペロンと目の下を捲って確認した。
「え?え?あの……家康さん……?」
「……成程ね。確かに、あの人なら気付くか」
「あの人?」
「別に。雑巾がけ、終わったんでしょ。行くよ。」
「行くって何処に……あ!ま、待って!まだ桶と雑巾を片付けてな…」
「…後で片付けておくから。今はあんたの部屋へ行くのが先。」
「私の部屋?」
の手を掴み、ズンズンと廊下を進んでいく家康。
普段あまり接点のない家康の強引な行動に、は困惑していたが…
何故だか拒否しようとは思わなかった。