イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第29章 極悪の何でも券 〈幸村Ver〉
勢いのままに怒鳴りつけた後で、幸村はギクリとする。
の瞳に涙が滲んでいたからだ。
(やっちまった……っ)
そう思い、急いで謝ろうとするが、それよりも早く、が幸村に震える声で言い返した。
『……っ!そんな言い方しなくたっていいじゃない!幸村の馬鹿っ!!』
『、ちょ、待っ……』
『大っ嫌い!!』
走っていくを見て、幸村は一瞬出遅れてしまう。
そうして苦々しげに唇を噛み締めながら、頭を乱暴にガシガシ掻いて、の後を追い、走り出した。
………………
………
市場からだいぶ離れた場所。
綺麗な川の近くで、幸村はを捕まえた。
はぁはぁと肩で荒い呼吸を繰り返しつつ、幸村の腕の中で、が『離してよ……っ』と弱々しい抗議を口にする。
『駄目だ、絶対離さねー』
『……っ。どうして、追いかけてくるの……?!』
『あのな、さっきは……』
『嫌!何も聞きたくな……』
『いいから聞けって!!』
『……っ』
を抱き締める腕に、更に力が籠る。
ビクリと震えたを安心させるように、優しい声で、そっと囁くように言葉を紡いだ。
『悪い、言い過ぎた。俺が悪かった』
『……』
の瞳から、ポロポロと零れる大粒の涙。幸村はその涙を少し乱暴に指で拭って、の顔を上向かせる。
『ゆき、むら……?』
『さっきの、何とか券。……今使ってもいいか?』
『え?』
『……何でも、してくれるんだろ』
『っ!』
お互いの顔と顔の距離が近付き、やがてその距離はゼロになった。
甘い口付けを繰り返し、僅かに震えるを盗み見て、幸村の鼓動が大きく跳ねる。
は、今にも蕩けてしまいそうな顔をしていて……
幸村の中に、もっともっとという欲が芽生え始める。
『……っ。何でもする、なんて……簡単に言うんじゃねーよ。そんな事、言われたら……』
『……?』
『止まれなくなるだろ。……もしまた、こんな券作ってきたら、そん時は全部貰うからな』
『なっ……』
『――覚悟しとけよ』
終わり☆