イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第16章 熱情 後編〈石田三成〉
(トキジさん?……違う。誰?トキジさんの仲間の人達かな)
そう思って耳を澄ませていると、静かに、しかしハッキリと、会話の内容が聞き取れた。
あまりに予想外の内容に、は耳を疑い、蒼白になる。
『今回の件、上手くいったようだな』
『はい。トキジは多少無茶な案でも、仲間の為と言えば何でもやりますから』
『マトモな神経を持ち合わせていれば、織田家ゆかりの姫を拐う等出来る筈もない。それこそ一族郎党皆殺しにされてしまう』
『……本当に私の事は助けて下さるのですね?』
『勿論だ。機を見て、姫を連れ出せ。あのお方が待っている。お前には相応の報酬を支払おう』
『ありがとうございます』
『……お前は賢い。だが、当主はどこまでも阿呆だな。だから御家まで潰れてしまうのだ。あの織田が取引に応じる事など有り得ん。……機を見てと言ったが、なるべく急げ。織田がいつ仕掛けてくるか分からんからな』
『あの姫は、信長だけでなく、他の武将達からも寵愛を受けていると聞いています。姫の身に危険が及ぶような愚行には出ますまい』
『……ほう、成程。まぁいい、頼んだぞ。連れ出した時、行く先は分かっているな?』
『はい。町外れにある、いつもの宿でございましょう?』
『そうだ。…さて、俺はもう行く。そろそろ当主達が買い出しから帰って来る頃だろう。……全て奪い取れば良いものを、俺には理解出来ん』
『ええ、本当に。それでは、お気をつけてお帰り下さい。杉谷様』