第13章 独占欲には蓋が出来ない〈徳川家康〉

止まっていた手を再び動かして、着付け直しの続きをする。なるべく触れないようにと気を付けるが、どうしても時折掠めてしまい、その度にはピクンと躰を震わせた。

家康の吐息に熱が籠る。


「……何で、そんなに慣れてないんだよ」


ボソッと聞こえた呟きに、が「家康さん？」と言いながら振り向くと、家康の目元辺りが、少し赤く染まっていた。


（……家康さんも、私の反応に戸惑ってるんだ。そうだよね……この時代の人は着物が当たり前なんだし……）


おはしょりや襟元を整え終えて、家康の手が身八つ口から抜かれる。後は流れるように帯を締めて、長く感じられた直しが、やっと終わった。


「……ありがとうございました」

「…………」


気まずく思いながらも、はお礼を述べるが、家康は何も答えず黙っている。

怒っているのかと、がおずおずと躰ごと向き直り、家康を正面から見据えると、突然ぎゅっと抱き締められた。


「い、家康さん？」と、慌てて顔を上げると、その唇を塞がれる。


「んっ……ぁ……！」