第2章 出会いの話
「芥川くん?」
「あれ?ん??あんた誰???」
はい・・・?
「誰って・・・」
「小林は?」
数学のプリントに目をやり、数学だったら小林じゃん?と疑問を抱くように首をかしげている。
え、だって4月には小林先生は産休に入るって挨拶したみたいだし、私だって昨日自己紹介した・・・昨日は欠席の生徒もいなかったわよね・・・?
「まさか、昨日も寝ていたの?」
昨日は初日と意気込んでいたものの、注がれる視線に緊張もしていた。芥川くんが寝ていることにも気がつかなかったのかな・・・?
「え~、寝てたかも?」
仕方なく、経緯を説明して昨日から3年C組を任されていることを話した。芥川くんは、え~小林子どもいんだ!なんて言って、どこまで話聞いてないのよと心配になった。
「そんなわけだから、これからよろしく。私の授業で寝ていたら課題も補習もしますからね。」
「でも放課後は部活あんじゃん~」
「自業自得です。」
シルバーフレームのメガネを直して言い切ると、跡部にどやされる~と嘆いでいた。
跡部、ってたしか・・・
「芥川くんテニス部?」
「へ?」
「跡部くんって生徒会会長でテニス部の部長さんでしょ?昨日すれ違ったけれど・・・あ、」
いけない、生徒の前で他の生徒を評価するようなこと言っちゃダメよね、教師ですから。マズイと言った表情を隠すようにずれてもいないメガネを直した。