第2章 出会いの話
「跡部に会ったんだ~話した?」
「すれ違っただけよ。」
「すごかったっしょ?」
「そうね。」
周りの女子生徒の黄色い声もすごかったけれど、あの整った容姿、堂々と歩く姿、オーラを身にまとっていてすごかった・・・っていうか今時の中学生ってすごいわね。なんて言えない、と心の中に閉じ込めて苦笑した。
「惚れちゃった~??」
「・・・はい?」
「結構センセーたちからも人気あんじゃん、あとべー」
「生徒に対してそういう感情は持ち合わせていないわよ。」
先ほど思い出した跡部くんのこと、もしかして見透かされているの?と顔を強ばらせてしまったこと悟られないように、冷静に返した。
「ふーん?」
なんだか腑に落ちないのか眉間に皺を寄せて首をかしげているが、面白がっているなんてこの時はまだ気がつかなかった。
「さ、そろそろ次の授業があるから、あなたももう戻りなさい、プリントは放課後必ず持ってくるように。」
時計に目をやるとそろそろ予鈴が鳴る時間。私も準備があるし、C組は次は音楽じゃなかったかしら?と言うと、やっべ~と言って芥川くんは飛び出して行った。出る間際、こちらを振り返ってまた後でね~っと浮ついた声で手を振った。
彼を見送ると、次の授業の準備を始めた。
また後でね、という言葉に、渡したプリントは自分の元へ返ってくるだろうと安堵した。
まさか跡部くんの話になるとは思わなかったけれど、あんな中学生離れした子ばかりではなく、芥川くんのように中学生らしい生徒がいることにもホッとした。ここは氷帝学園。聞けば有名な財閥の子息が集まっている。そりゃ見た目だってオーラだって一目おける生徒が多いんだろうけど。
髪をまとめ直し、次の授業へと向かった。