第8章 仮面
「おねが・・・い・・・忍足くん・・・言わないで・・・」
このままずっとこちらを見ないつもりかと思っていた顔が、やっと俺を見る。言わないでと懇願するその顔には、目に涙を貯め、溢れさせていた。
スっと眼鏡を外してやり目元の涙を拭う。素顔は先程よりもか弱く、そして幼かった。
「泣かんで・・・言わへんから。な?」
そっと頬を撫でると不安げに、本当・・・?と尋ねる。女の涙に弱かったんか?“どうでもいい”が、どうでもいいではなくなるように、何かが弾ける。
「ほんまに。でも・・・」
「で、も・・・?」
「俺も、センセーとナイショのことしたいんやけど?」
俺って実はこうやってイジメるん楽しむタイプなんやろか?好きな子ほど・・・とは言うが、まぁ、好きとかの感情はまだようわからんけど。
返事を待たずに、そっと唇を重ね、舌先で唇を舐めてやると、んっと甘い声が漏れる。キスをしながら体を寄せると、俺の胸を押し名ばかりの抵抗をするが、そんなん、煽ってるだけちゃう?腕に収まるほどの体をビクッと震わせている。唇を離せば酸素を求めてハァハァと息は荒く、怯えるような顔でこちらを見ていた。
「なぁ、昨日のことは黙っとく。だから俺のも良くシてくれへん?」
もう一度尋ねる。黙っとくからなんて卑怯かもしれんけどな。
「・・・し、しなかった、ら・・・?」
「シてくれへんの?」
「だって・・・」