第8章 仮面
ランチルームでジローが声を掛けたのは、まさしく、昨日ジローと関係を持っていた教師だということはすぐにわかった。
俺は授業もあらへんし、興味は持ったものの問いただそうとかそこまでは思わんかった。せやからこのタイミングには驚いた。
新任なのかまだ若い教師で、小柄、そしてシルバーフレームの眼鏡が特徴的であった。ジローは俺のことを同じテニス部の“おっしー”と言って紹介した。
「テニス部は仲がいいのね。」
俺たちは1年の頃からの付き合いだ。跡部は最初から目立っていて王様-キング-、などと言っていたが実力はある。敗者切り捨ての氷帝学園テニス部であるが故に、2年の夏の終わり、3年が引退をするとレギュラー枠で安定を獲得しだした俺たちは、馴れ合うつもりはなくとも仲は良い方だし、互を高め合っていた。寝ている部員がいれば探しに行く、そんな世話だって焼く仲なのだ。
そんな同じテニス部の部員を探しに行く際に知ってしまった秘密。バラせば教師は解雇されるだろうし、生徒も停学、最悪の場合退学など重い罰を受けることだろう。俺がレギュラーじゃなかったら・・・学校での地位が低かったら、そんな未来もあったかもしれないが、テニスの才能にも恵まれ、学校生活も充実。秘密を知ったところでどうでも良かったのだ。
どうでも良かった、とは綺麗事か。
今俺は、その教師に問いただし、こうして壁へ追いやっている。
昨日、ジローと何シてたん・・・?