第8章 仮面
「わからないわ、お役に立てなくてごめんなさいね?」
忍足くんには悪いなと思ったけれど、知らないで通すことにした。芥川くんも内緒と言っていたみたいだし・・・
「そうですか。じゃあもう1こ。」
そう言うと忍足くんはぐっと顔を近づけて耳元でこう言った。
“昨日、ジローと何シてたん・・・?”
先ほどの、見透かされているような感覚は、やっぱり間違っていなかった。
忍足くんは、知っている・・・。
何で知っているかはわからない。芥川くんと同じ部活だから聞いたのかしら・・・?でも、秘密って・・・。忍足くんの低く挑発するような言い方に手の平はしっとりと汗ばんできた。
何か言わなきゃ、でも誤魔化せるようなことが浮かんでこない、自分が思っている以上に焦って、動揺していた。
目を合わせられず、何も言えないでいると、突然腕を引かれ、すぐそばの空き教室へと入った。
今は使われていない教室は、シンと静まり返っていて空気もどこかひんやりとしている。カチャンと鍵の掛かる音がやけに大きく聞こえた。