第7章 境界線の恋*二口堅治
~葉月side~
買い出しに付き合ってもらってから数日
相変わらず佐伯センパイは調理室に顔を出す
「葉月~ケーキ作ってくれたか?」
『今ちょっと作りたい物があって』
レモンを絞っている葉月の横に腰掛けて
手元を覗きこんで来た
「それなに?」
『えっとグミなんですけど』
「グミ?あれって作れんの?」
『はい。作り方は簡単なんですけど...』
堅治は甘い物よりも酸味があるすっぱいグミが好き
だからそれを作って差し入れをしようと思っているのだが
酸味が上手く出ない
「葉月ってグミ好きだったんだ」
『あっいえ。私じゃなくて堅治が好きなんです』
「は?二口?
アイツが作ってって頼んで来たのか?」
『え?』
佐伯の方を見ると笑顔が消え冷たい瞳でこっちを見ていた
「なんで俺の頼みは後回しで
二口の為に料理してんの?」
な、なに?
スッと立ち上がると無表情の顔で近づいてくる
「なあ、俺は葉月の何?」
『な、なにって...』
一歩近づくたびに葉月も一歩後ろへと下がる
「センパイ?友達?」
背中に壁があたりこれ以上さがれなくなった
葉月の肩を掴んだ
『っ!!?』
ビクッと震えて持っていたボールが落ち
ガシャーンと音をたてた
『離して!?堅治助けて!!』
「二口じゃなくて俺を見ろよ!」
『やっ、んんー!!?』
怒り任せに唇を塞がれ葉月は瞳をギュッと閉じた
いやだ、こわいよ堅治...
「葉月!!」
ガラッと開いた扉から堅治が勢いよく飛び込んで来た
『けん、じ...』
佐伯から解放され堅治に抱きしめられポロポロと涙を流した