第3章 秘密の合図*溝口貞幸
『お待たせ』
部活が終わって
駅のトイレで着替えた葉月が
タクシーに乗り込んできた
私服になるとずいぶんと大人っぽくなる
「んじゃ飯行くか」
いつも高校生が行きそうにない店を
ピックアップしてディナーに出かける
今日は夜景がきれいに見える
ホテルのレストランだ
『わぁ!凄く綺麗』
"葉月の方が綺麗だよ"...
なんて及川見たいなセリフは俺には言えない
『ねえ
今日及川君たちに焼きもち焼いたでしょ?』
「は!?いや、そのだな....」
『うん』
「や、焼いた...悪いか焼きもち焼いたら?!」
『ふふっ全然
むしろ焼きもち焼かれて嬉しい』
嬉しそうに微笑む葉月を見て
こちらまで笑顔になった
『今日はご馳走さま。また明日』
チュッと触れるだけのキスをして
葉月と別れた
翌朝部活に顔を出すと
部員たちがざわついていた
「お前らアップは済んだのか?」
「あー!噂の溝口君じゃん!?」
噂?なんの噂だ?
「昨日の夜さー
溝口君が女の人とイチャついてるの
マッキーが見たって
ねえねえ彼女居たの溝口君?」
顔見られたのか?
いや、及川の言い方を聞く限りじゃ
葉月だってバレて無いはずたが....
「.....見たのか花巻?」
「え?」
「だーかーらー女の顔!
見たのかって聞いてんだよ!?」
「いや~残念ながら逆光で
みえなかったんだよね~」
セーフ逆光ありがとう
『おはようございます
みんな集まって何してるの?』
「葉月ちゃん聞いてよ~
溝口君昨日の夜女の人と
イチャついてたんだって~」
『へ~コーチの彼女ってどんな人なんですか?』
はあ!?何を物凄い笑顔で言ってんだ!
「すらっとして背が高くて髪が長かったな~
そうそうちょうど山城見たいな感じ」
「!?」
まずいまずいっなんか言わないと
「まあ...なんだ、アイツは
か、可愛い、かな?ハハハ」
『そうですか彼女さんきっと幸せですね』
「うわ~溝口君が惚気てる~」
及川はムカつくが葉月が喜んでるから
まあいいか...