第3章 秘密の合図*溝口貞幸
あの日から及川は絡んで来る
"彼女元気~"や"今度紹介してよ~"と
そんなんだから烏野に負けんだよ!
春高予選で烏野に負けたうちの3年生は
部活を引退し受験勉強に励んでいる
葉月も同じくマネージャーを辞めた
俺はと言うと1.2年の指導に忙しい毎日を送っている
正直言えば葉月が居なくなって
俺の士気はぐんと下がった
デートだって最近は出来ていない
「はあ~」
「コーチお疲れですか?」
「ん、いやな
来年はマネージャー入ると良いな
そうすりゃあ1年ももっと練習できるだろ?」
「そうですね」
及川が引退してからと言うもの
賑やかだった女子の声援も少ない
と言うか無いに等しい状態
部員は多いが体育館が寂しいような気がする
「あれ~葉月ちゃんも見に来たの~」
『うんちょっと用があってね』
ぴょっこっと体育館に顔を出したのは
髪をアップに纏めた俺が逢いたかった可愛い彼女
今日はデートの日だったか
部活早めに終わらすか
後輩を揶揄う3年を諫めながら
早く終わる為に直着と片づけを指示していった
「「「「おめでとうございます!!」」」」
今日は葉月たち3年生の卒業式
式が終わり部室前に集合した後輩たちが
卒業する及川たちに花束を渡している
その中に葉月もいる
『私にもくれるの?』
「もちろんです」
『ありがとう』
今日の彼女は髪をアップに纏めている
不意にこっちを振り向きにっこり微笑み髪を解いた
ん?なんだ急に??
『卒業したしもう合図は必要ないでしょ?』
「「「「??」」」」
ああなるほどな
そうもう合図は必要ない
なにせ今日から一緒に住むんだからな
『今までお世話になりましたコーチ
そして今日からよろしくね貞幸さん』
「「「「ええーっ!!?」」」」
今日から葉月は溝口葉月になる
及川がしきりに"合図って何!?"と喚いている
"合図"それは葉月が髪をアップに纏めいたこと
デートの合図だった二人だけの秘密の合図
秘密の合図*溝口貞幸 End