第17章 それは・・・蜘蛛の糸のように
「彼女が連れ去られた時の映像を確認したんだが、おかしな点がいくつかある。」
「おかしな点?」
「それって何ですか?」
「まず一つ目・・・彼女は眠らされて無理矢理連れて行かれている感じだが、男の方はそうでもない。だが、彼女は朦朧とする意識の中で男達に警戒する奴の声を聞いている。2つ目は・・彼女から聞いた話に信憑性がない。」
「瑠李が嘘を付いていると?」
「いや、彼女が嘘を付いているのではなく・・・ただ聞いただけの話だけに、事実がわからないということだ。」
「秀樹さん、でも実際に瑠李ちゃんは現場にいたんだから、間違いないですよね?」
「そう。だが、証拠が何もない。実際に殴られて怪我をしたと思うというだけで、殴られたところを見たわけでも、怪我をした本人を見たわけでもない。さらに犯人は母親に電話をして金を要求したと言った。だが現場には来ていない。」
「確かに・・・不明確だな。」
誰もが考え込んでいて無言だった
「それと・・・あの息子・・今まで結構いろんな事やらかしているけど、毎回親父がもみ消している。そして決まって、海外に親が居ない時にやらかすんだ。」
「親父ってそんなに権力持ってるのか?」
「雅人・・お前知らないのか?」
「え?ハルは知ってるのか?」
「今、うちの営業で、試用期間で契約をしている取引先の三嶋産業だよ。」
「あぁ、あの会社の息子だったのか・・。」
「あぁ、今月は社長が海外に行ってるらしくて来月契約する予定だ。」
「ふーん。」
「興味ないのかよw」
「まぁ、お前が抱えてる案件だったら問題ないだろ?営業は俺の担当外だからな。」
「はいはい。そうですね。」
「でも気をつけた方がいい。あいつは。面倒だぞw母親が絡むとさらに面倒だw」
「そうっすよねw今までも結構めんどくさかったっすよねw秀樹さん俺に丸投げするしw」
「普段俺の役に立ってないんだから、そんな時くらい役に立て。」
「酷いっすよw」
「何も起こらなければいいのだが、警戒はしていた方がいいだろうな。」