第6章 妖界へようこそ!!
前を行く妖の後を追っていった先はうどん屋だった。妖に続きカラ松達も店の中に入る。
「お帰りなさい!!!」
厨房と思われる所から声がした。その声の主の可愛いらしい妖が私に向かって来るなり抱きついてきた。
「貴女が廉ちゃんね!!辛かったでしょう?良く頑張ったわ」
『すみません、痛いですっ』
「!!ごめんなさい!あっ、手首に痣が!!」
会って間もないのにも関わらず、その妖は私の手を取り店の二階で手当てをしようと申し出た。
「おい、真火!!勝手に…」
「兄さん!手当てくらい良いでしょう!」
真火の圧に兄の妖は言葉が詰まった。真火は私を連れそそくさと二階へ向かった。
店内では残された兄の妖は溜め息を吐き、カラ松達は苦笑していた。
「ったく、真火はお人好し過ぎるんだ」
「あはは、でもそれが真火ちゃんの良いところだよ!!」
「そうだな……にしても、あの鬼達はいったい誰が…」
「アイツ自身がやったんじゃないのか?」
「いや廉にそんな力はない。廉以外の奴がやったとしか…」
カラ松がそう言いかけた所でトド松が声を上げた。驚いた二人がトド松に目を向ける。
「カラ松兄さん不味いよ!!もし手当てで廉ちゃんが着物を脱いだりでもしたら……!!」
着物に掛けられた幻術の事を思い出した二人は慌てて店の二階に向かった。
一方その頃、私は着物の事を忘れて手当てを受けていた。真火にアザキエソウと言う薬草の塗り薬を手首に塗られる。妖の薬が人間に効くのか疑問だったが、手首の痣は見事に消えていった。
『痛くない……』
「良く効く薬だからね!……他に痛む所は無い?」
私は肩とお腹が痛いと答えると、"着物脱いじゃおうか"と真火に着物の帯をほどかれる。
すると突然、部屋の襖が開いた。
「廉!!脱いでは駄目だ!!」
「廉ちゃん脱いじゃダメ!!」
「『…!!』」
私は条件反射で近くあった座布団を、二人に思い切り投げた。トド松は瞬時にカラ松を盾にして、座布団は見事カラ松の顔面にヒットした。
「ゴフっ……!!!」
カラ松は倒れた拍子に後ろの壁に後頭部をぶつけ目を回した。