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妖からの贈り物【おそ松さん】

第8章 決戦




「お、目が覚めたか」


パッと目が覚めた私はその声の主に視線を向ける。


『な…ケホッ…何でお前が』


私は乾いた喉を押さえ気だるい身体を持ち上げる。
黒いそいつはクックッと喉を鳴らした。


「何でときたか。随分と余裕だな…自分の命が危ういと言うのに」


視線を落とせば手枷がつけられている。
辺りは見たこともない無機質な部屋だ。あるのは私がいるベッドと側にある椅子のみ。
ガタンと音を立てその椅子に悪松が座る。


「へぇ、俺からの贈り物は気に入って貰えたみたいだな」


ニヤリと笑みを浮かべる悪松。
一瞬何の事か理解できなかった。だが悪松が鎖骨の辺りを指先でつつき、これまでの出来事を思い出す。

一松と共にした熱く溶け合った夜。
その時の記憶はしっかりと残されていた。自ら一松を押し倒したことも。


『ち…が…あれはお前が!!』


顔に熱が集まるのが自分でも分かる。
あれは私の意思じゃない!!身体が勝手に動いて…!!


「嫌なら抗えただろ?だがお前はそうしなかった」


悪松がベッドへと近付く。重みでベッドが軋む。
私は咄嗟に身を引いた。だが気付けば私は悪松の手によってベッドに組敷かれていた。


「俺はお前に興味がある。兄弟達が何故"お前"に執着するのかを」


悪松が不適に笑う。


『…っそれはこっちが知りたい』

「ククっ、強気な所もそっくりだな。いや、そのまんまと言うべきか」

『…』


悪松は私と誰かを重ねたような言い方をした。
勿論私はその誰かを知らない。


「……本当に知らないのか?」


悪松は驚いたように言った。そして高らかに笑った。


「そんなに大事なのか!この人間が!!」


パッと私の手が離される。
今だ!!

私は悪松の腹にめがけ拳を振るう。


「残念」


完全に不意を突いたつもりだった。しかし私の拳は意図も容易く受け止められてしまった。


「そうだな…冥土の土産として昔話の一つでもしてやろう」


悪松は私の手を離すと、また椅子へと腰かける。
一つ間を置き、息を吐く。

悪松の口からポツリポツリと語られる昔話に私は仕方なく耳を傾けた。
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