第1章 鈴の音
後ろから声が聞こえ振り返る。
すると、目の前にぼふんッと白い煙が現れた。
その白い煙は次第に消え、中から妖が現れた。
赤色の着物に黒っぽい羽織を身に纏い、フサフサの尻尾が4本に獣耳が生えている。
人では無さそうだ…
「ちょっと、あんまり見つめないでよ~。
俺照れちゃうじゃん」
『………は?』
何だコイツ。
何言ってんだ?
「だ~か~ら~、あんまり見つめないで…」
いきなり声のトーンが下がったかと思うと、一瞬にして目の前へと移動していた。
思わず後退りをするが、腰に腕を回され動けなくなる。
しまった…!!
そう思ったのも束の間私は顎を掴まれ、唇に柔らかいモノが触れた。
それが妖の唇だと気付くのに、そう遅くは無かった…
私は目の前の妖から離れようと、肩を強く押すがびくともしなかった。
私の顎を掴んでいた手が後頭部へ移動する。
『ちょっ……んっ……』
文句を言おうと口を開くと、その間からヌルッとした舌が差し込められた。
なめていた飴が奪われ、唇が離れる。
「顔赤くして、可愛っ……!!」
「ゴルァーー!!クソ天狐!!!
てめェ何しとんじゃー!!!」
ごんっ!と凄い音がしたかと思うと、妖が私から手を離し悶絶する。
「いっっつあ~~……!!」
すると何処からか現れた、緑色の着物を着た妖が赤い着物の妖の首根っこを掴み、私から離れた所まで引きずる。
「……何すんだよ!チョロシコスキー!!もう少しで飴が喉に詰まるとこだったわ!!」
「あぁ?!!自業自得だろうが!!……って、誰がチョロシコスキーだ!!」
2人の妖が言い争いをしてるのを唖然として見ていると、ふと肩をつつかれ正気に戻る。