第1章 鈴の音
「……大丈夫?」
『あ…昨日の!!』
昨日私を殴った妖の事を思い出すが、取り敢えず距離を取る。
すると一松は、自傷気味に笑う。
「ケッ……どうせ俺はクズでゴミ………ん?何それ?」
一松の視線の先を見ると、私の手首に小さい鈴付きの赤いミサンガのようなのが巻かれていた。
「……おそ松兄さん……何これ。
こいつから、おそ松兄さんの妖力感じるんだけど」
一松が尋ねると、二人は言い争っていたのを止めこちらに視線を向けた。
「あぁー、それ?俺のものっていうシルシ?」
は?ふざけんなよ!!
いつの間に着けたんだよ!?
私は自分の手首に巻かれていた物を外そうとすると、手を取られ阻止される。
いつの間にか目の前に、あの赤い妖がいた。
「おっと…外しちゃだめよ?
折角着けたんだから」
『…そんなの、私の勝手でしょ』
そう言うと、赤い妖は妖艶に微笑み私の耳に顔を近付けた。
「いいのかな~そんなこと言って。
今自分が置かれている状況を良く見てみなよ」
『………』
妖3人に対し人間1人。明らかに不利だ。
「流石!良い子だな~、廉ちゃんは!」
赤い妖は顔を離すと私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
それに対し、何も出来ないという悔しさから私は眉間に皺を寄せた。
「ああ、ついでに言っとくけど俺が居ないときにそれ外したら……どうなるか分かるよね?」
妖の瞳が赤く煌めいた。
有無を言わせぬ圧力に冷や汗をかく。
すると、一松が私の腕を引き寄せ、自分の背中の後ろに隠した。
「それ…本気じゃないよね、おそ松兄さん」
「……一松」
心配そうに事を見つめる緑色の着物を着た妖。
周りは不穏な空気で包まれた。