第1章 鈴の音
続きましてはお使いです。
おばぁちゃん家から少々歩いたところにある"神田さん"の家に届け物。
車や自転車は御座いません、なので徒歩です。
勿論草むしりをして直ぐという訳ではなく、昼食後に向かうことに。
「…じゃあ、宜しくね」
『うん!じゃあ、行ってきます!』
笑顔でそう返すと、私はガラガラと音を立て引き戸を開けた。
外は相変わらず暑く、蝉が元気良く鳴いているのが聞こえる。
私は祖母から受け取ったお届け物を持ち、麦わら帽子を被り、"神田さん"の家に足を進めた。
道中、小さい妖を見かけるが視えないふりをする。
まぁ、あっちからは干渉してこないだろうが念のためだ。
はぁ、本当にめんどくさい…
私は只平和に暮らしたいだけなのに、何で視えるんだか。
嘘つき呼ばわり、かまちょ呼ばわり、変人扱い、その他諸々…妖が視えるせいで私の暮らしは…
妖なんて消えてしまえと何度思ったことか…
『あ、ここか』
表札には"神田"と書いてある。間違いない。
ピンポーンとチャイムを鳴らす。
ちゃっちゃと届けて、帰ろう━━……
◯◯◯
……長かった。
いやー、相変わらず話すの好きだなぁ。神田さん。
…ま、飴玉貰ったし、いっか。
うん、単純だな自分。
私は貰った飴玉を口の中に転がしながら、祖母の家に帰っていた。
リィーン…
その帰り道、突然鈴を鳴らしたような音が聞こえた。
音がした方に視線を巡らせるとそこには、上の方へと続く長い階段があった。
先程通ったときには無かった階段が。
ふと嫌な予感を感じ取った私は、速くその場を離れようと足を踏み出す。
その時、ぶわッと強い風が足元から吹き荒れた。
突然の強い風に思わず目を瞑る。
足はすくみ、その場から動けなくなる。
強い風は直ぐに治まり、恐る恐る目を開けるとそこは…
"神社"だった。
振り返ると、黒い大きな鳥居がある。
「久しぶりだね~。廉ちゃん!」