第6章 妖界へようこそ!!
着物にかけられている幻術は効果的で、妖達が直ぐ横を通っているのにも関わらず人間だとバレていない。
『って何時まで手を握ってるの!!』
「手を繋いでないとはぐれちゃうでしょ?それにデートなんだし!」
『デートじゃない…偵察です!別に、繋ぐのは手じゃなくても良いじゃん』
「もう照れ屋さんだなー、廉ちゃんは!」
と言ってトド松は囁き声で更に続けた。
「自然に振る舞ってないとバレちゃうよ?ね?」
辺りを見ると妖達がチラチラと此方を見ていて、少なからず私達は注目の的となっていた。
『うっ……分かった』
「エヘッ、もうちょっと歩いたら着くからね!」
トド松は私の手を握り直し、満足そうに微笑んで歩き始めた。
歩いている間トド松は妖界について教えてくれた。
妖界には幾つもの国があり、この町はその国の中の一つだという。他の国との交流が盛んに行われ、様々な品が売られているのがこの町の特徴。
確かに良く視ると多種多様な妖達がいる。
他にも驚いた事に、布に手の生えた妖が呉服屋から出ていく動物のバクの様な妖にお辞儀をしていたり、威勢の良い飲食店に入って行く妖達がいたりと、まるで人間の様に暮らしていた。
妖がこんな風に暮らしているなんて…全然知らなかった。
「着いたよ!」
トド松が足を止めたのは、茶屋と書かれた暖簾が掛かっているお店だった。横に"ぱんけーき"と書かれた暖簾もある。
入ってみると女性客が多く、お店の内装は和風なカフェといった感じだった。天井には和紙を使った電飾、カウンター席やテーブル席もあればお座敷もある。
私達は店員さんに丁度空いたお座敷に通された。
「ナイスタイミングだね!そうそう此処のお店はね、ぱんけーきが美味しいって有名なんだよ!僕も良く来るんだー!」
『あー、表の暖簾にも書いてあったね。どのパンケーキが美味しいの?』
お店のメニューにはズラリと美味しそうなパンケーキが載っていた。パンケーキ以外にも和食や洋食が食べられるようだ。
「うーんとね、どれも美味しいんだけどオススメはこれかな!」
トド松が指差したのは、ふわふわのパンケーキにバニラのアイスにイチゴ等のフルーツが盛り付けられているパンケーキだった。