第5章 探し物
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『あ、あった……あったあぁぁああ!!!』
キラキラと光るピンを掲げ、叫んだ。その声を聞き付け二人が駆け寄ってくる。
私は"はい"とピンの持ち主に手渡す。
「……良かったぁ」
心から安心したような声に、思わず微笑でいるとその声の主とふと目が合った。
が、直ぐに目を反らされた。
「……り…と……」
『ん…?』
「………ありが…とう」
目を反らされつつのお礼の言葉は、小さく独り言のようであったが、ちゃんと私の耳届いていた。
おそ松にも聞こえたようで、ニヤニヤと口角を上げている。
「うっし、探し物も見つかった事だしデートの続きでもするか!」
『うん……って、デートした覚えないんですけど!?』
「おぉ!まさかのノリ突っ込み頂きました!!」
『……なにそれ』
「あー!!人の真ん前でイチャイチャしないでもらえる!!?」
『「!!」』
さっきまで恥ずかしそうに顔を赤らめていた筈が、今は黒いオーラが背後に立ち込めていた。
感情の変化が忙しい人だなと思っていると、隣でそう言えば!!と声が上がった。
「最初に俺らに会った時、"依頼"がどうたら~って言ってたよな。あれって誰から依頼されたんだ?」
「……それは教えられないわ。依頼者のプライバシーに関わるから」
「プライバシーねぇ~……トト子ちゃん俺らに借りがあるの、忘れてない?」
「……っ」
おそ松はニタニタと口の端を持ち上げた。
『ちょっと、おそ松!何言ってんの!?』
「何って、大事な事聞いてんの。これはお前に関わる事だし、俺にだって関わってる事。此処で聞かないでどうすんだよ。
んで?依頼者は?目的は?」
三人の間で流れる沈黙。
さっきまで水で湿っていた足は、大分乾いてきていた。
すると、"チッ……"と舌打ちがこの沈黙を破った。
「依頼を受けた身として依頼人の事は明かせない。
でも、依頼された内容を少しだけなら……但し他言無用よ」
「分かった。それで、依頼の内容は?」
「……本当かしら………依頼人から頼まれたのは"妖退治"。貴方を含め、此処等一帯を牛耳っている6体を殺すことよ」