第5章 探し物
『おそ松、何かパーっと探し物が見つかる様な術とか無いの?』
「はぁあ?そんな都合の良い術があったらもうやってるっつーの。……何でか、においも辿れねぇし」
おそ松は不服そうに、鼻をヒクヒクさせた。何故不服かと言うと、おそ松は犬並みに鼻が良いらしくピンのにおいを辿れば直ぐに見つかると思っていたそうだ。しかし、結局ピンは見つけられずにいた。
私も草を掻き分け、ピンが落ちていないか良く目を凝らしながら、不意に額に垂れてくる汗を拭った。上の木々のお陰で影ができているとは言え、暑い。
一度体勢を起こし、身体を伸ばした。少し離れた所でトト子が、黙々と探している。
思った通り、とても大事な物のようだ。
私は暑さで削がれていった気合いを入れ直そうと、またしゃがみ込み近くの小川に手を浸した。腕にも軽く水をかける。
ちょっとは涼しくなったかな。
ん……?ミズ……みず……水…………そうか!!
突如私の頭に不意討ちの一本の矢が突き刺さったかの様に閃きが訪れた。
『そうだ、水だ!此処ってまだ探して無いよね』
「?…あぁ。俺が見たのは、木の間に落ちていく所だからな……んで、何で"水ん中"を探すんだ?
……あ、もしかして川で遊びたくなっちゃった~?」
『違うわっ!!……あれだよ、ほら。水の中に入ると、においが感じなくなるってやつ。だからピンのにおいも消えちゃったんじゃないかな』
「!!……成る程。確かにピンが川ん中に入ったとすれば、においを辿れなかったのにも説明が付くな。
お~い、トト子ちゃ~ん!!あれ、うわっ、いつの間にっ!」
「なにボサッとしてるのよ。さっさと探すわよ!」
いつの間にかおそ松の背後に移動していた敵は、私達に急ぐように言うと小川の中に水飛沫を上げて入っていった。
それに続いて私も入ると、今度は水の中に目を凝らしながらピン探しを続行した。