第5章 探し物
『大丈夫。何もされてないから』
「本当か?!本当に何もされてないんだな?!」
『本当だって』
中々信用してくれないおそ松に、思わず廉は苦笑した。
そんなおそ松の後ろでは、呆れた様子の敵がぶつぶつと何かを呟いていた。
「本当に大丈夫そうだな………で?お前、まだ何か用があんの?また俺と戦う?」
やっと気が済むと、おそ松は振り返り敵を威圧するように声色が変わる。
「別に…また会ったのはたまたまよ。………ねぇ、あんた達この辺で魚の飾りがついたピン、見かけなかった?」
『ピン?』
そう言えばと、敵がカラスに光る物を取られ走り去っていた事を思い出す。
「ピン~…?……あっ!そう言えば………さっき木上に登った時そんなようなピンを見つけた様な……」
「それ!今何処にあるの?!!」
「……えっと、さっき突然カラスが群れで襲ってきて、振り払った時にあっちの方に…飛ばしちまったな」
そう言っておそ松は指を指した。
敵は目を見開いて青ざめると、おそ松が指した方向へと駆けていった。
「……んー、そんなに大事なもんなのかね~。たかがピンごときでさ。はいこれ鍵な。じゃ、今の内にこの森出ようぜー」
おそ松が私の手を引き歩いて行こうとするが、私の足は数歩進んだ所で止まった。
おそ松が振り返り不思議そうな視線を送る。
『………私、一緒に探しに行く。……大切な物みたいだったし』
「……はあ?何言ってんのお前!……さっき襲われたの、忘れたのか!?」
『忘れてない……でも、何かほっとけないなぁ…と』
馬鹿だと言われれば、そうかもしれない。
でもあんな必死そうな顔を見たら、なんだかほっとけなくなってしまったのだ。
おそ松は頭を乱暴に掻くと、私の耳にも聞こえる位のため息を吐いた。
「………わーったよ。たーだーし、何があっても知らねぇからな」
『分かってる』
「………んー…まぁ、借りを1つ位作っておくのは悪くねぇ考えだな」
おそ松はニタァと悪そうな笑みを浮かべた。
何か良からぬ事を考えているのは確かだろう。
私は一緒に探しに行くと言ったのは、不味かったのではとふと思った。