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妖からの贈り物【おそ松さん】

第5章 探し物



暫く走ると、おそ松は足を止めた。
少し屈んでそれほど急ではない斜面に私を下ろす。
どうやら、自分達の目の前にある木上にお目当ての物。家の鍵があるようだ。

鍵があるとされるこの目の前の木は、周りの木よりも飛び出ていた。
カラスも厄介な所に持って行ってしまったものだ。
見た感じだと、私ではこの木を登るのは難しそうだ。
しかし、今は……


「えっ、俺ー?」

『うん、私じゃ登れないし』


おそ松は驚いた顔をした後、面倒とでも言うように眉をひそめる。


「べっつに、俺が取り入っても良いけどさー?
ご褒美みたいなのがないと、俺やる気出ないなー」

『は?』


交換条件という訳か?
おそ松の事だ、どうせご褒美といって変な事を要求してくる……
それは、嫌だ。


『じゃあ、自力で頑張る』

「えっ、ちょっ…」


取り敢えず、木の前に立ち見上げる。

どう考えても枝が上の方にあり、手を伸ばしても届かない距離にある。
んー、隣の木から跳び移るか。よし。


「いやいやいやいや、何する気?!まさか跳び移ろうなんて考えてないよね?」


隣の木を登ろうとした時、後ろからおそ松に手を引かれる。

…その気でしたが?


「馬鹿じゃねーの!?そんなの危険だろ!!」

『だっておそ松が取ってきてくれないから』


そう言うとおそ松は言葉を詰まらせ、少し考えた後はー…と息を吐いた。


「わーったよ。俺が取りに行けば良いんだろ?」


待ってました!とばかりに廉はヨシッと、下の方で拳を作った。
しかし、おそ松の言葉はそこで終わらず"だけど"と続ける。


「取ってきたらご褒美は貰うからな?」


おそ松はニィと口の端を持ち上げると、反論をする間もなくピョンピョンと器用に登って行った。
あまりの身軽さに呆気に取られる。流石妖とでも言うべきか、人間技ではない事は確かだ。


「おーい、あったぞー!」


暫くしない内に、上の方からおそ松の声が聞こえた。
無事鍵は見つかったようだ。
私はホッと胸を撫で下ろした。
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