第5章 探し物
敵はうつ向き、そのまま動かない。
左手は強く握り締めているのか、プルプルと震えていた。
「何で……トト子が……何で………トト子は…強い筈なのに…」
ブツブツと独り言を呟く。
殺す事に関して、余程の自信があったのだろうか。
しかし、このおそ松の前では通用しない強さだったらしい。
と、そこで隣で"でも"と言う声が聞こえた。
「…俺より弱いじゃん」
『んなっ?!』
「はぁああ!!?」
あっけらかんとした態度でそう告げたおそ松に、何敵を煽ってんだよ!!と心の中でツッコミを入れる。
ギロリと睨んできた目には殺意がこもり、今にも襲いかかってきそうなほどだった。
背中に冷や汗が流れた。
「だってそうじゃん?背中取られてたし。なぁ、廉?」
『何故、聞く?!』
「?…お前見てただろ?」
いや、まぁ見てましたけど!?
それ私に聞く?普通。
『はぁ……駄目だ。バカだわ、こいつ』
「いやぁ~、よせやい!!」
『褒めてませんけど?!』
マジで何なの、この妖。
敵は2人の会話に痺れを切らしたのか、会話を遮るような大きな声を発した。
「あー、もう!!
今日の所は引いてあげるわ!!次会った時、絶対お前を殺す!!」
大太刀をおそ松に向け、強く言い放った。
「おう!楽しみにしてるよ~!」
おそ松は笑顔で答えた。
敵は大太刀を鞘に納め、紐を肩に掛ける。
そして、そのまま颯爽と立ち去って行った……
と思いきや、幾つか黒い物体が敵目掛けて突っ込んで行った。
「痛っ!!何なの!?痛いって!!」
カラスだ。
何匹かのカラスが集団で襲って来たのだ。
カラス達はキラリと光るお目当ての物を捕らえると、そのまま逃げ去った。
「返せや、オラアァァア!!」
敵もカラスを追い掛け、その場を走り去って行った。
ふと、おそ松を見上げると目が合い、2人同時に吹き出した。