第5章 探し物
「お前は此方で大人しくしてろよな。だいじょーぶ、ちゃんと守るから」
おそ松はそう言って、ぽんっと私の頭に手を置くとくしゃっと撫でた。
その時、優しい目を向けられたが、その目はまた敵と対峙する。
「ちょこまかと…喧しいんだよオラアァァア!!」
向かって来る敵は、おそ松に向かって大太刀を振るった。
おそ松はそれも意図も簡単に、ヒョイと上に跳び回避する。
「何で逃げてばっかなのよ!!…これじゃ依頼が完了しないじゃない!!」
おそ松が逃げてばかりなため、とうとう敵はキレ始めた。
"依頼"って何のことだ……?
「依頼~?何だそれ?」
つい"依頼"という言葉を言ってしまったらしく、敵はハッとし、舌打ちをした。
「ふ…まぁいいわ。だって、これからお前を殺すから問題無いわよね…!!」
風を斬る音が先程よりも更に攻撃的になった。
そんな攻撃もおそ松は、上下左右と身軽に避ける。
その姿は楽しんでいるようにも見えた。
「だから、何で攻撃してこない!!!」
肩を上下し、此方を睨み付ける。
おそ松はそんな事も気にせず、4本の尾をゆらゆらと揺らす。
「…ん~、自分で言うのもなんだけど俺は女の子に手を上げるほど、最低な性格はしてねーし、今急ぎで遊んであげられねぇんだわ」
おそ松はごめんね~、と片方の手を顔の前に出した。
「……っ馬鹿にするな!」
ぶんっと、大太刀を一振りするが、それも当たらず。
一瞬、敵の背後に回ったかと思ったら、いつの間にか隣におそ松は立っていた。
その手にはピンクのリボンが2本あり、それを地面に落とす。
「これも避けられないんじゃ、俺は殺せねーよ」
敵の綺麗に纏められていた髪の毛が、肩に掛かる。
大丈夫か?手を差し伸べられ、私はおそ松の手を取り立ち上がった。