第5章 探し物
『は?…何、瞬間移動でもできるって言うの?』
「いやいや、瞬間移動は流石の俺でも使えねぇわ。…でも俺、天狐だからさ?使えちゃうんだよね~…千里眼」
千里眼って、確か遠くの方まで見えるって言う…あれ?
「て、ことで急いで追いかけるぞ!」
『うわっ…!!』
おそ松は何やら屈んだかと思うと、視界が急に反転し、体がふわりと浮き上がった。
気づけば私はおそ松に横抱きされていた。
そしてそのまま走り出そうとするので、廉は慌てた。
『何すんの!?離して!!』
足をばたつかせ下ろすように言うが、おそ松は余計に力を強くした。
「おいこら!暴れんなって!!早くしねぇーと、ホントに鍵見失っちまうぞ!!」
鍵を見失うという言葉に、ぐうの音も出なくなる。
「よしよし、いーこ。んじゃ、振り落とされねー様にしっかり掴まってろよ?」
そう言って、カラスの後を追いかける様に木々の間を走り始めた。
ヒュンッと横を木々や風が通りすぎて行く。
これは本当にしっかり掴まっていないと落ちてしまいそうだ。私はおそ松の着物を掴んでいた手を強めた。
「……」
走り始めてから一言も発さないおそ松をちょっと盗み見ると、先程までのにやけた顔ではなく、赤く瞳を光らせながら真剣な表情で走るおそ松がいた。
木々の間から時折覗く光が髪に当たって、何故だか見入ってしまう。
いやいや、私は何をしてるんだ。
相手はおそ松で妖だよ!!
さっと視線をおそ松から外すが、おそ松は次第にスピードを落とし始め、終いには足を止めた。