第1章 鈴の音
…って、急に殴ってくるなんて、ムカつく妖だな。
あの猫耳のヤツじゃない妖が、後ろから殴ってきたにしろ、あいつにはもう会いたくない。
いや、絶対に会わない。
「廉ちゃーん。スイカ持ってきたわよー」
そう心の中で誓っていると、おばぁちゃんがニコニコしながらスイカと冷え冷えの麦茶を持ってきた。
おばぁちゃんは、よっこいしょ…と私の隣に腰掛ける。
『あっ、ありがとう!』
「ふふ、廉とこうしてゆっくり話すのも久しぶりだね~…。学校はどうだい?楽しいかい?」
『うん、楽しいよ!ただテストとかがあれだけど…』
そうかいそうかいと、おばぁちゃんはコクコク頷いた。
『あ……』
そういえば、何で私は此処に居るんだろう。
元々おばあちゃん家に来る予定ではいたが、何故あの妖は私を殴った後おばあちゃん家まで連れてきたのか…そもそも何でおばあちゃん家を知っていたのか。
「…どうしたんだい?」
『…えっ、あ、いや、まだおじぃちゃんに挨拶してなかったな~…と思って。』
この事はおばあちゃんには話さないでおこう。心配は掛けられないし。
「そうね!おじぃちゃんも喜ぶと思うわ!じゃあ、スイカを食べた後でお願いできる?」
『うん!』
私は頷くとスイカにかじりつく。
甘く、みずみずしい、美味しいスイカだった。
おばぁちゃんもスイカにかじりついた。
それから、二人で他愛もない話をした。
勿論、妖の事以外で…
私はスイカを食べ終わると、おじぃちゃんがにこやかな顔をした写真が置いてある、仏壇の前に座る。
手を合わせ、おじぃちゃんに"来ましたよ"と挨拶をする。
挨拶を終えると、明日何しようかなと、ふと思った。
するとおばぁちゃんに呼ばれ、私は"はーい"と返事をすると、その場を後にした。