第5章 探し物
おそ松にいつの間にか鍛え上げられたボディーブローを食らわした私は洗面所へと逃げ込んだ。
鏡に写る自分の顔は真っ赤っかで、蛇口をひねり出てきた水で顔を冷やす。
あーー!!もう何だよあいつ!!?
キキキキ、キスなんてしてくるなんて!!
あーー…もう此方はそ、そういう耐性が無いんだからな!!
……って、何私は妖相手にドキドキしてんだ、バカ!!
ふと鏡に写る、顔が赤い自分と目が合う。
なんだか悔しくなってまた顔に水をかけた。
忘れよう。うん、そうしよう。
私は記憶の一部を抹消する事を決め込むと、タオルで顔の水分を拭き取った。
と、そこで自分の目が重たくないのに気付く。
ちらりと目を鏡に向けると、案の定目はいつも通りで赤くも何ともなっていなかった。
……おそ松か…
使ったタオルを洗濯機に投げ込み、部屋に戻った。
そそそ…と部屋を覗き込むと、おそ松の姿は無く掃除道具だけが取り残されていた。
居て欲しかったような、居なくてホッとしたような、よく分からない感情になりながらも、廉は掃除道具をいそいそと片付けた。
………
昼食が終わり、居間でゆったりとする。
ペコペコだった腹も満たされ、ちょっとした眠気に襲われる。
しかし、この後は神田さんの家にお使いにいかなければいかない。
私は眠気を飛ばすように両頬を叩いた。
「廉ちゃん、お疲れかい?眠いなら部屋で寝て来たら?」
『んーん、大丈夫』
何と言うか…違う意味で疲れた。
けど、おばぁちゃんにお使い頼まれてるんだ、寝てなんかいられない!
気合いで眠気を振り払うと、スクッと立ち上がり麦わら帽子を取りに行った。