第5章 探し物
うーーん……
どうしよう、今のこの状況凄く嬉しいんだけど…
あ、えと、廉が泣いてる事が嬉いんじゃなくてね……そのーす、好きな子が無防備な姿で俺の腕の中にいるって……
もっと触れたくならね?
廉が泣き始めちゃってから少し時間が立ったけどさ、そろそろ俺の我慢の限界が……
でも、この良い雰囲気を壊す訳にもいかねぇし?
ど、どうしよう……
すると、俺の着物を掴んでいた手が離れ胸をそっと押される。
廉の背中にあった俺の手は廉の腕に留まった。
うつ向いていた廉の顔を覗き込めば、案の定目の周りは少し赤くなっていた。
『……ごめん、もう大丈夫…』
ボソッと呟かれたその言葉はちゃんと俺の耳にも届いた。
ほわっと胸が温かくなる。
「ほんとに?本当に大丈夫?もっとギュッとしてやろうか?」
廉の腕にあった手をまた背中に戻しギュッと抱き締める。
『ちょっ…もう大丈夫って言ってるでしょ!!』
うがー!!と俺の腕の中で暴れる。
「えー…」
『えー…じゃない!!離せ~~!!』
尚も暴れる廉に、ある事を思い付きにやけつつ俺は言った。
「よし分かった!じゃあ、ご褒美頂戴?」
『ご、ご褒美?』
ピタッと動きを止める廉。
「そ、ご褒美」
腕を緩め、手を廉の顔に添え唇が触れあう位のキスをする。
顔を離すと目を見開き顔を真っ赤に染めた廉がいた。
『~~~~~っ…!!』
「ご馳走様」
廉の可愛らしい反応に思わず頬が緩む。
『こ、この変態がーー!!』
「ごふぁっ!!!」
突然、不意討ちの見事なボディーブローをもろに食らう。
畳に派手な音立てて落ち、走り去る廉の後ろ姿を目だけで追う。
「はは、は、すげーな廉。あんなの何処で覚えたんだ?」
畳の上でゴロンと仰向けになり、ふと思い出すのは顔を真っ赤に染めた廉の顔。
時間差で自分の頬が熱を持つのが分かる。
あぁ…やっぱ好きだな…
今度こそ守るから、廉。