第5章 探し物
朝食を食べ終わった廉にさっきの事を聞こうとするが、スルッとかわされ聞けずにいた。
その後も、掃除云々で聞けていない。
もー、何だよ!!今日は折角俺が廉と一緒にいられるってのに、全然話せてないじゃん!!?
そろそろかまっ……じゃなかったさっきの事聞かなくちゃな。
「なぁなぁ、廉。さっき何で誤魔化したんだ?お前のばぁちゃん、前は視えてたんだろ?別に言っても問題はないんじゃねぇか?」
掃除をしていた廉に問う。
すると廉は手を止めないまま答えた。その声は朝の時よりも元気がない。
『…だから…だよ』
暗く、重い声。廉が何か難しい事を考えているのは、俺でも分かる。
俺は妖だからよく分からねぇが、人間にとって俺達が視えると嫌な思いをする事もあると思う…
それをお前は……
「…バッカじゃねーの?」
『え…?』
「…あのなぁ、どうせ廉の事だから心配を掛けたくないとかって思ってんだろ?
……妖の俺が言うのもなんだけどな…もうちょっと周りを頼ったらどうだ?…そうやってずーっと一人で溜め込んでるのはな……辛いだろうが」
少しでも良いから…
廉の心のつっかえとなる物を取ってやりたい。
なぁ、俺を頼れよ。
『あれ…』
ポロッ…と廉の目から涙がこぼれ落ちた。
え……
廉を泣かせてしまった。
その時、俺の中では戸惑いと焦りが生じた。
俺は泣かせるつもりで言ったんじゃなくて…あー!クソ!!
どうしたらいいか分からず、俺は廉の腕を引き、自分の腕の中に収めた。
そして、落ち着かせる様に背中を優しく叩く。
『離して!』
「嫌だ」
『はぁっ?』
「離さない」
こんなにも苦しんで、泣いている廉を放ってはおけない。
ごめんな、廉が苦しんでるってのに、俺は何もしてあげられない。ただ、こうやって抱き締めてやることしか…
次第に俺を押し返す力は弱くなり、廉は俺の着物をぎゅっと掴み、声を押し殺す様に泣いた。