第4章 霊力
『…もしかしておばぁちゃん、変な事言った?』
その言葉に、ぶわっと僕の脳裏にあの一言が甦る。
"チョロ松さん。貴方廉ちゃんの事、好きなんでしょ?!"
自分の気持ちを改めて知らされたその言葉。
自分の頬が熱を帯びるのが分かる。
「いやいや、別に変な事は言ってないというか…言ったというか…ちょっ、ちょっとお手洗い借りるね!!」
とっ取り敢えず、一旦離れよう。
僕は急いで居間から出て、トイレに向かう。
戸を閉め鍵を掛けると、戸を背にへなへなと座り込んだ。
落ち着こう。一旦落ち着くんだ僕。
深呼吸。深呼吸。
すーっ…はーー…
廉の前では、カッコいい僕で在りたい。
前には無かったこの気持ち。
妖が人間にこんな感情を抱くなんて、常識では有り得ないと思っていた。
最初は只の興味だったのが、今では廉にこんなにも夢中になって…
「廉、好きだ」
と、本人の前では言える筈もなく、トイレに虚しく響いた。
「そろそろ戻るか」
頬の熱が収まったのを確認し、僕はトイレを出た。
……
居間に戻った僕は、そろそろ本題に入ろうとしていた。
「…あのさ、"大事な話"って覚えてる?
今、僕ら2人だけだから話したいんだけど良いかな…?」
『…あ、うん。良いよ』
廉から了承を得ると、小さく息を吸った。
「…単刀直入に言う。廉、君は悪い…奴等から狙われているんだ。だから、それを阻止するため僕達が君を守る」
ぽかんとする廉。
『……えーと、何かの漫画の話?』
「…うん、確かに信じて貰えるような話ではないね。でも、これは本当なんだ。……奴らは君の"霊力゛を狙っている。」
『私の…霊力…』
廉は下を向くと、納得したように数回頷いた。
『分かった』
「え…信じてくれるの?」
僕は驚いてそう聞き返すと、廉は呆れたように言った。
『信じろって言ったのはそっちじゃん。
それに妖が視えている時点で、普通じゃないし』
そう言って、廉は困ったように笑った。
どうやら僕は、随分逞しい女の子に恋してしまったようだ。