第1章 鈴の音
━━しばらく走った後、そいつは突然止まると私の手首をやっと離した。
私は息切れをしながら、そいつから少し距離を取り、流れてくる汗を拭った。
それに対し、連れてきた本人は息切れどころか、汗1つ流さない。
『…っはぁ…何が…目的?』
「…………」
『…用がないなら、帰りたいんだけど』
と、強い口調で言い放った。
助けてくれた?のかは分からないが、今まで妖と関わるとろくなことが無かった。
だから私にとって妖は、只の厄介なモノでしかなく、一刻も速くここを立ち去りたかった。
しかし、下手に動くと何をしてくるか分からない…
どうしようか悩んでいると、そいつは口を開きぼそぼそと呟いた。
「………………一松」
『…?』
イチマツ…名前だろうか。
だとしたら、何で私に名乗った?
相手の意図が読めず考えていると、突然後ろから衝撃が走った。
意識が朦朧とし、視界がぼやけ体が前に傾く。
そいつは慌てたように何か言葉を発していたようだが、私には聞き取ることが出来なかった…
そして私は意識を手放した━━…