第4章 霊力
玄関の鍵を開け、引き戸も開けるとそこに立っていたのは…翔太君だった。
「……おう」
『…ども』
会話終了。
えっと……私何かしましたか…?
来るなんて、昨日一言も言わなかったよね…?
彼の突然の訪問に戸惑った。
すると、翔太が1つため息を吐き口を開く。
「…あのさ、暑いんだけど。中入れてくんない?」
『あ、うん。そうだね』
何やら鞄を下げやって来た翔太君は、"おじゃましまーす"と言って家の中に上がった。
翔太君は何度か神田さん(おばぁちゃんの友達)と一緒におばぁちゃん家に来る事があった。しかし、この頃、私が中学生の時にはあまり来なくなった。
それが、どういう風の吹き回しだろう…
私は疑問を浮かべつつも、翔太に出すお茶を用意する事にした。
氷と麦茶を入れたコップとちょっとしたお菓子をお盆に乗せ、居間に運ぶ。
襖を開ければ、そこには翔太君だけが座っていた。チョロ松の姿は視あたらなかった。
パタンと襖を閉め、持ってきた麦茶とお菓子を出し、丁度翔太君の向かい側に腰を下ろす。
翔太君はありがと…と呟くと麦茶を口にした。
『…えっと、今日は何しに…いらしたのかな?』
ちょっと可笑しな文章になったが、私としては良くやったと自画自賛する。
翔太君はコップを置き、平然と言った。
「宿題で分かんないとこがあったから、教えて貰いに来た」
私はぽかんと口を開け、目を瞬かせる。
『え、えー、私に?…私、凄く頭良いって訳でも無いんだけど。うん、普通だよ?私じゃ無くても学校の先生とか友達にでも…』
「いいから、教えろ」
『あ、はい』
翔太君の鋭い視線に、口を閉じた。
蛇に睨まれた蛙ってやつだ。
このまま、2人だけだと別の意味で心臓が爆発しそうだ。
おばぁちゃん来てくれ!!なんならチョロ松でも良いから!!
誰か私を救ってくれー!!!