第3章 心が揺れる時
『ぶふぉあ!!!』
水面から顔を出し肺に空気を取り込む。
その私の後に、十四松が水面から顔を出す。
『…っはぁ、下ろしてって言ったのに…
2人で飛び込むなんて危ないって!』
怪我でもしたらどうするんだ!
「でも、気持ち良かったでしょ?」
十四松は小首を傾げながら微笑んだ。
『……ま、まぁ』
「でしょー!!もう一回する?それとも泳ぐ~?」
…そんなキラキラした目で見ないで欲しい。
『いや、私は良いや。十分涼んだし』
「えー、もっと泳ごうよ~」
口を尖らせている十四松を置いていき、川から上がる。
そして木陰に置いておいた鞄の中からタオルを取り出し体を拭いていく。
一応タオル持ってきといて良かったなー
まさかこんなずぶ濡れになるとは思わなかったけど。
帰るまでに服乾くかな。
ある程度体を拭き終えると、濡れた靴と靴下を座って脱いだ。
すると、ずぶ濡れになった十四松が川から上がり此方に近付いて来た。
『もう気が済んだ?タオル、もう1枚持ってきたから使う?』
私は鞄の中からもう1枚タオルを取りだそうとすると、突然景色が変わった。
『へ?』
気付けば、いつの間にか十四松に押し倒されているではないか。
『…えっと…これはどういった事…ですかね?』
何故か敬語で問うと、十四松は口を閉じ目が猫の目のようになり固まった。
十四松から垂れてくる水滴が顔に落ちる。
両方の手首は地面に押さえ付けられ、手が封じられた。
どうやってこの状況を逃れられるか、頭を回転させる。
『…十四松?ちょっと退いてくれないかな』
お願いをするように言うと、十四松からゴクリと唾を呑み込む音が聞こえた。
「廉ちゃん…」
十四松がそう小さく呟くと、顔を私の肩口に寄せた。
十四松の熱い吐息が肩に吹き掛かる。
『ちょっ、十四松!!?』
あわあわとこの状況に焦っていると、聞き覚えのある怒りの籠った声が聞こえた。
「おい!何やってんだよ!!こんな真っ昼間に!!」