第3章 心が揺れる時
そして廉ちゃんは小さく笑った。
廉ちゃんが笑うのを間近で見るのは久しぶりで、僕は驚いた。だっていつもの廉ちゃんの笑顔は、何か作っている笑顔みたいだったから…
しかし、その笑顔は段々消えていく。
…もっと笑ってよ
そんな顔しないで
僕があんな事言ったから?
…ねぇ笑って…!!
「廉ちゃん!!」
また頭の中がぐるぐるしてきて、それから離れたくて僕は廉ちゃんの名前を呼んだ。
『!!……何?』
廉ちゃんは驚いたように顔を上げた。
「悩み事っすか?僕で良ければ聞くよ!」
廉ちゃんには笑っていて欲しいから。
『何でもない』
廉ちゃんは一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに元に戻る。
また廉ちゃんに笑って欲しくて、僕は徐に立ち上がり廉ちゃんに手を差し伸べた。
廉ちゃんにこの気持ちが伝わってほしくて…
僕の手を中々取ろうとしない廉ちゃんを、手を引き立ち上がらせて、たかいたかーいと持ち上げた。
「どっせーい!!」
『ちょっ……!!』
廉ちゃんは僕の突然の行動に驚き、目を見開いた。
そんな廉の表情に、十四松は少し悪戯心が芽生える。
『ちょっと下ろして!』
廉ちゃんは僕の手首を掴んで、下に下ろすように言った。
しかし今の僕には悪戯心が芽生えている。
僕は廉ちゃんの願いに反し、その場でくるくると回転した。