第3章 心が揺れる時
今日の廉ちゃんはとても忙しそうだった。
手伝おうかと話しかけても"後でねー"と軽く返事を返されるだけで、特にする事がない僕はただ見ているだけとなった。
お昼過ぎ、廉ちゃんは朝干していた洗濯物を取り込んでいる。
これは僕にも手伝いが出来るんじゃないかと思い、手伝いを申し出ると、廉ちゃんは渋々了承してくれた。
でも2人でやるとあっという間に終わってしまう訳で、僕はまたする事がなくなった。
取り込んだ洗濯物を畳むという手伝いも出来るけど、僕がやるとどうしても上手く出来なくて服がぐしゃっとなってしまう。
結果的に廉ちゃんの仕事を増やしてしまい、これでは二度手間になってしまう。
…という訳で僕はする事がなくなった。
廉ちゃんはというと、洗濯物をテキパキと畳んでいる。普段からやっているのか、畳むのが早い。
「ねーねー、もう終わる?」
ちょっと話し掛けてみたりする。
『うん』
「…そっかー」
廉ちゃんの返答に頷き返す。
んー、廉ちゃんともっとお話ししたいけど怒られたら嫌だし…
十四松は自分の首を伸ばしてちょっと家の中を散策してみる。
すると不意に廉ちゃんの方から僕に話し掛けて来た。
『……あんた、今日は何しに来たの?』
僕は嬉しくて、伸ばしていた首を直ぐ引っ込めた。
「えっとねー、廉ちゃんを守りに来たんだ」
『…守る?』
「うん、最近奴等が活発になっているんだー。だから廉ちゃんが………」
此処に来て自分が大事な事を喋ってしまった事に気付く。
…ヤバい喋っちゃった!!
廉ちゃん誘導するのが上手すぎるよ!!
あああ、チョロ松兄さんに怒られちゃう…
「あーー、今のは聞かなかった事にして!!オナシャッス!!」
『え…いや、そこまで言われたら気になるんだけど…
奴等ってなに?私がどうかしたの?』
頭がぐるぐるとなる。
僕は咄嗟に廉ちゃんの口を塞いだ。
「ごめん、僕からはこれ以上言えない…」
廉ちゃんを不安にさせたくないから…
『…わかった。今のは聞かなかった事にする』
廉ちゃんは諦めたように僕の手を退かした。