第3章 心が揺れる時
十四松の笑顔に、不思議と口元が緩んでしまった。
「!!今、廉ちゃん笑ったー!!」
『!!!……笑ってない』
おばぁちゃん家に来て3日経ち、自身の中の妖に対する気持ちが変化し始めている事に、まだ廉は知らない…
ただ一つだけ分かることは、コイツらはいつも視ている妖とは何かが違うということ。
「廉ちゃん!!」
『!!……何?』
突然の大きな声に驚き顔を上げると、十四松の顔が近くにあるのに気付く。
「悩み事っすか?僕で良ければ聞くよ!」
満面の笑みを浮かべる十四松に少したじろく。
妖に相談するのは、何か違う気がするのだが…
『何でもない』
「………」
十四松はいきなり立ち上がると、私に手を差し伸べた。
私ははその手は何なのだと視ていると、十四松は痺れを切らしたのか廉の手首を掴み、立ち上がらせた。
『…っと』
突然の行動に少しふらつく。
「どっせーい!!」
『ちょっ……!!』
すると十四松は、廉の腰の辺りを掴み高く上げる。足が床から浮いた。
もしこの時におばぁちゃんが帰ってきたら、十四松は視えないため私だけが宙に浮いているという、可笑しな状況を目にするだろう。
『ちょっと下ろして!』
私は十四松の手首を掴み下ろすように言うが、あろうことか十四松は笑いながらそのままゆっくり回り始めた。