第3章 心が揺れる時
次の日
昼過ぎの日が高くなる頃、廉はおばぁちゃんと自分の洗濯物を畳んでいた。
手を動かす度に、チリンチリンと手首に着けている(…と言うか着けられた)赤いミサンガの鈴が小さく鳴り響く。
おばぁちゃんはと言うと、近所の梅田さん家にお茶をしに行っている。
私も一緒に行かないかと誘われたのだが、遠慮しておいた。何故かって?……それはですね…
「ねーねー、もう終わる?」
廉の隣で、首をかしげながら聞いてくる十四松。
『うん』
手を休まずにそう答えると、十四松はそっかーと頷いた。
そう今この家には、私の他にも十四松がいる。
因みに朝から一緒にいるのだが、他の奴等はいないようだ。
勿論、おばぁちゃんは十四松に気付いてはいないと思う。
『……あんた、今日は何しに来たの?』
首を伸ばしてキョロキョロしていた十四松に聞くと、十四松は首を引っ込めて答えた。
「えっとねー、廉ちゃんを守りに来たんだ」
『…守る?』
「うん、最近奴等が活発になっているんだー。だから廉ちゃんが………」
言葉が途切れ不思議に思っていると、十四松は何やら焦ったようにあたふたし始めた。
「あーー、今のは聞かなかった事にして!!オナシャッス!!」
『え…いや、そこまで言われたら気になるんだけど…
奴等ってなに?私がどうかしたの?』
そう言うと、十四松が私の口元を着物の袖で塞ぐ。
「ごめん、僕からはこれ以上言えない…」
本人には言えない事……という訳か。
『…わかった。今のは聞かなかった事にする』
と言うと、十四松の顔がパアァと明るくなった。