第2章 どうぞお好きな松を
すると前の2人が、ぼふんッと音を立てて白い煙に包まれる。
目の前には、先程とは違い妖本来の姿をした2人が現れた。
1人は、2度も視たことがある姿。
そしてもう1人は、青を基調とした山伏の姿に背中には烏のような黒い翼が畳まれていた。
2人はクルリと振り返ったかと思いきや、次の瞬間には私の両隣へと移動していた。
『んな…!?』
気付いた時には2人に手を取られ、前に進まされる。
その場から数歩歩くと、何やら薄い膜を通り抜けた感触がし、その先の景色が一変する。
1度来たことのあるこの場所。
私の後ろには、黒い大きな鳥居がそびえ立っている。
「今帰ったぞ、ブラザー!」
黒い翼が生えた奴が声を張り上げ、自分達が此処に来たことを知らせる。
「廉ちゃん、やっと来たー!!」
神社の拝殿の扉が開き、あいつが現れる。
「廉ちゃーん!!」
声の主は、その場からジャンプしたかと思うと弧を描きながら此方に飛んで来た。
『ちょっ…』
いつの間にか、両隣にいた2人は離れた場所に居る。
視線を戻すと、手を広げた赤い妖がもう目の前に迫っていた。
「させるかーー!!!」
「ふぇ?…」
赤い妖は一瞬にして後ろへ飛ばされた。
だが飛ばされた赤い妖は、空中でクルっと回転し見事に着地する。
「なーんで邪魔すんだよ。チョロ松ぅ」
「お前が廉に飛び込んで行ったからだろうが!!∑」
相変わらず、声の大きい緑色の着物を着た妖。
その様子を見ていると、突然両側から誰かに抱き締められる。
「廉ちゃんだ~!!」
「会いたかったよ~!!」
抱き締められた反動で頭から、麦わら帽子が落ちた。