第2章 どうぞお好きな松を
しかし俺達は所詮妖、人間とは違い腹は減らない。
飲みたい時に飲み、食べたい時に食べる。
それが普通。
暫くすると、廉の祖母が美味しそうな香りを漂わせて戻って来た。
目の前に、茶漬けと味噌汁と漬け物が置かれる。
3人揃った所で、いただきますと手を合わせた。
まず味噌汁を口に運ぶ。
「…うま」
思わず口に出る。
「本当!お口に合って良かったわ!」
身に染み渡ると言うか何と言うか…兎に角美味しい。
パクパクと箸を進めていると、襖が開かれる音がした。
『おは……』
振り向くと目を見開き驚いている廉の姿があった。
「おはよ……」
『……何で、家に…』
「good morning!!カラ松ガール!!」
『は………?』
うん…やっぱこの味噌汁旨い。
すると廉が少しキレ気味で、こそこそと話し掛けてきた。
『何であんたが此処で、平然と、ご飯食べてんの!?』
飲んでいた味噌汁を一旦離す。
「……ご飯食べる?って、言われたから」
『………ちっがう!そうじゃなくて、何で此処に居るのかって聞いてんの!!』
…今日はご乱心だなー
と、呑気な事を思いつつ味噌汁を飲み干した。
廉はというと、納得が行かない…という顔をしつつも、出された朝食を摂り始め、あっという間に食べ終える。
その後、少しばかり廉の支度が済むのを外で待った。
ガラガラと引き戸が開かれ、中から麦わら帽子を被った廉とその祖母が出てくる。
『じゃあ、行ってきます』
「楽しんで来てね!」
廉は笑顔の祖母に手を振り返し、俺達はご飯のお礼を告げた。
「また来てね」
それに返事をするように、片手を上げる。
…そうだな、事が片付いたら…また来よう。