第2章 どうぞお好きな松を
玄関を上がり、居間へと通される。
床一面に畳が敷かれており、昔ながらの雰囲気を感じさせられる。
2人はちゃぶ台を囲むようにして座った。
「はい、どうぞ」
少しの間、その場を離れていた廉の祖母に麦茶を差し出された。
「サンキュー、マダム!」
「…あざーす」
小さくお礼を呟くと、にっこりと微笑まれ俺達と向かい合う形で座った。
「さっき廉ちゃんのお友達って、仰っていたけど…お名前聞いても宜しいかしら?」
「!…すまない、申し遅れたな。オレはカラ松でこっちは一松だ」
「カラ松さんと一松さんね!…私、廉ちゃんのお友達にお会いするの初めてで!
……あの、良かったら少しお話でもしません?」
好奇心という視線が突き刺さる。
…はぁ、こりゃあ下手な事は言えないな。
でも俺苦手なんだよなー、人間と話すの…
…ま、コイツに任せておけば良いだろ。
カラ松に視線を送ると、えぇっ…という顔をされたが渋々頷いた。
それから、色々と質問をされた。
何処に住んでるー?だとか
お幾つー?だとか
カラ松は戸惑いながらもなんとか受け答えしていた。
たまに俺がフォローし、不審に思われないよう心掛ける。
その時の俺の心中は、廉が早く起きて来て欲しいという気持ちで一杯だった。
すると不意に、間抜けな音が耳に入る。
「あらやだ、私ったら。
御免なさい、まだ朝ごはん食べてなくて…!
……お二人は朝ごはんは済ませているの?」
「食べていないが…」
「そうなの…!?
なら一緒に食べましょ!廉ちゃんまだ起きて来ないみたいだし…」
そう言って廉の祖母は台所へと向かった。
それにカラ松が手伝うと言って、その後を付いて行った。