第2章 どうぞお好きな松を
スマホのアラーム音が頭上でうるさく鳴り響く。
布団から出たくない。
でもアラーム音がうるさい。
私は嫌々布団の中から手を伸ばしアラームを止める。
━AM8時━
静まり返った部屋に、微かにカチャカチャと皿同士がぶつかる音がする。
おばぁちゃんは既に起きているようだ。
私はまだ寝ぼけている体に鞭をうち、起き上がり、布団を畳む。
キャリーケースから服を取り出し、ぱっぱと着替えを済ませると、顔を洗いに洗面所へ足を向けた。
『眠っ……』
先程顔を洗ったものの、まだ眠気が拭いきれていない。
『おは……』
廊下と居間を繋ぐ襖を開けていた手を止めた。
「おはよ……」
『……何で、家に』
「good morning!!カラ松ガール!!」
『は………?』
なんと目の前には、テンションが高い奴とその後で一松が平然としながら朝食を摂っていた。
一松と一緒にいると言うことは、もう一人の奴も妖だろう。
目を何度も擦るがどうやら視間違いでは無さそうだ。
私は取り敢えず目の前の奴をスルーし、一松に近付きこそこそと話し掛ける。
勿論、二人の間には少し距離がある。
「ん…?」
『何であんたが此処で、平然と、ご飯食べてんの!?』
味噌汁を飲んでいた一松が、少しめんどくさそうに答えた。
「……ご飯食べる?って、言われたから」
『………ちっがう!そうじゃなくて、何で此処に居るのかって聞いてんの!!』
何なんだコイツは…!!
いつの間にか、テンション高い奴も普通に食事してるし……
「フッ…随分と仲が良いようだな!俺も妬けてしま……」
「ふふっ、話に聞いた通り仲が良いのね。
皆で何話してるの?」
え…おばぁちゃん。イ・マ・ナ・ン・テ?
『……ちょっ、ちょっと待って!おばぁちゃん!?えっ!!?』
「朝から元気ねぇ。はい、これ廉ちゃんの朝ごはん」
『え…あー…ありがとう』
ぐ~~……
とっ、取り敢えず腹ごしらえだ。