第7章 ※出会いと別れ
「何でだ?」
「……俺達は強くなった……でも廉は妖が視えるってだけで今回みたいに狙われる。それに俺達も注目してるってなれば…廉を更に危険に晒すことになる……だから廉とはもう会わない方が良い」
臆病、ネガティブ……でもそれが俺だから。
おそ松兄さんにしては珍しく人の話を最後まで聞くと、唸って"それもそうだな"と呟いた。
「…でも今回の騒動の事もあるし、暫くは廉ちゃんの様子を見といた方が良いかもな」
「!!……おそ松兄さん」
「但し、廉ちゃんともう会わないっつーなら、廉ちゃんの記憶から俺達の存在を消すべきだろうな」
「…っ!」
廉の記憶から俺達を消す…確かにその方が良いかもしれない。
俺達が廉に会わなくなったとしても、今日みたいに廉の方から会いに来てしまう可能性もある。
でも、記憶を消せばあの時俺と廉が出会った事自体が無かった事になってしまう…
『ねぇ、見て!十四松から教えてもらったんだよ!!』
俺の着物の端を引っ張りニコニコと笑いかける廉。
廉はさっき十四松から教わっていた正拳突きを俺に披露してくれた。
「……うん。良かったね…俺より強そうだ」
俺は廉の頭を撫でた。
その後ろで、なにやらクソ松達がざわざわしていたが今は無視しておこう。
「……おそ松兄さん、お願い」
『?』
「あぁ」
おそ松兄さんはふわりと俺の横に来ると、廉の頭に手を置いた。すると廉は目を見開いて、身体が揺らいだ。
俺は咄嗟に廉の身体を受け止めた。
「ごめんな廉……」
と言っても廉には聞こえない。もう俺と会った事さえ覚えていない。
クソ松達が何事かとざわめきだし、それをおそ松兄さんが制した。おそ松兄さんが皆に訳を話している間に、俺は十四松の鼻の良さを借り廉の祖母の家へと案内してもらった。
「本当にこれで良かったの?」
「あぁ、これで良い。俺達は妖、廉は人間だから……」
まだ眠っている廉を祖母の家の縁側に寝かす。
俺達は他の人間の気配を察して、木上に飛び乗った。