第7章 ※出会いと別れ
…━ブウウゥゥゥゥン!!!
突如真上から降り掛かる声に、俺はハッとして瞬時に構えた。
…この声は、多分アイツだ。
ドシンっという派手な着地音と共に砂煙が上がった。その砂煙の中から現れたのは、俺の弟の十四松だった。
「……十四松、もっと静かに着地出来ないの」
「あはは~、無理~!!」
十四松は腕を上下に振り、豪快に笑った。一見何も考えて無さそうだが、十四松は兄弟の中でも特に勘が良い。
今此処に来たのも何か、察したのかもしれない。
「ははは………一松兄さん、さっき人間の女の子と居たよね?」
俺はギクリと肩を揺らした。
十四松に見られてた…?
「……そうだけど、何?」
「……泣かしてたよね?」
「違う、廉が勝手に泣き出したんだ」
「……違うよ一松兄さん。僕見てたんだ。さっきのは一松兄さんが悪い」
俺が悪いのか?……俺はただ…
モヤモヤとした気持ちに、眉間に皺を寄せていると十四松に着物の袖で口を塞がれた。
「もー!!一松兄さん!考えてる暇があったら、あの子に謝りに行くッス!!」
「んーんー!!んー!!!」
「あ、サーセン!!」
「…っぶは!!こ、殺す気か!!」
鼻と口を塞がれた分、目一杯空気を吸い込んだ。
息がやっと落ち着いてくると、またもや叫び声が聞こえてきた。
この声は……!!
「廉!!」
「えっ!!さっき一緒にいた子!?どの方向からッスか?!」
「あっちだ!!」
遠くから声が聞こえてきた方向を指差した。
その瞬間、十四松に着物の襟と帯を握られた。俺は意味が分からず声を洩らした。
「いっくよ~!一松兄さん!!!」
「お、おい、ちょっと待てじゅっ……わああぁぁぁぁあああ!!!」
十四松にグンっと引っ張られたと思ったら、勢い良く空へと飛ばされた。正面から吹き付ける風に顔が歪む。
飛ばした張本人の十四松は俺の背中に飛び乗った。
先程まで遠かった叫び声に段々と近付いて行く。
「あばばだ!!」
「いた!!!」
十四松は廉とその周りを囲む妖達に気付き、俺の着物を掴むと下に向かって首を伸ばした。
下にいた妖に首を巻き付けると今度は首を縮ませ、飛んで行く軌道を廉達の方へ変えた。
妖達は突然の奇襲に驚き、それに対し俺はニヤリと笑みを浮かべた。