第1章 ルカBDSS【知り過ぎた日】
Luka side--------
兵舎の中でパーティの最終準備が進められている中二人は揃ってアリスの部屋にいた。
アリス姿のルカは窓から夕日を見つめた。
「……あ」
その瞬間、西の地平線に夕日が完全に沈んだかと思うと、二人の体は光に包まれた。
(眩しい……)
光が止み、ゆっくり目を開けると
ルカはソファに座っていた。
視界には、窓際に佇むアリスが映っている。
「………アリス?」
(あ、俺の声だ……)
聞き慣れた自分の声が響き、安堵が湧き上がる。
振り返ったアリスも、ほっとしたような泣きそうな顔でルカを見つめた。
「……うん…ルカ…!」
(よかった)
ほっと胸を撫で下ろすと、ルカはアリスのそばに歩み寄った。
アリスは申し訳なさそうに見上げてくる。
「今日は本当にごめんなさい……誕生日なのに台無しにしちゃって…」
(……怖い思い、たくさんしたはずなのに…)
ルカは首を横に振り、アリスの頬を撫でた。
「元はと言えば俺があなたに気を遣わせすぎたせい」
そう答えて、ルカは今日一日を振り返った。
アリスの体で一日を過ごして
アリスは体がとても小さくて、か弱くて、非力で…
でも柔らかくて、優しい心地がした。
「あなたがか弱くて、いつも頑張ってることが……よく分かった」
先程まで自分が入っていたその小さな体を、無意識に両手で包み込む。
「………ルカ?」
「ありがとう…アリス」
その言葉にアリスは首をぶんぶん振る。
「私の方こそ!助けてくれて…ありがとう」
自分に向けられたアリスの笑みが眩しい。
(この先も……俺が、守っていく)
この笑顔を。この人自身を。
「……体も戻ったことだし、そろそろみんなのところに戻ろっか!」
少し頬を染めたアリスが、かすかに視線を彷徨わせてルカから離れようとした。
(……っ)
一瞬のうちに、今日の出来事が走馬灯のようにルカの頭の中を駆け巡った。
(………だめ)
気づいた時は
ルカはアリスの腕を掴み、そのまま後ろから抱きとめていた。
「………ル、ルカ…?!」
戸惑うアリスの声がする。
(ダメ……このままみんなのところに行っちゃ…)