第1章 ルカBDSS【知り過ぎた日】
アリス side--------
力強く、骨ばったたくましい腕が。
ついさっきまで、自分のものだったその両腕が。
……今は自分の動きを封じている。
(ルカ……どうしたの?)
普段のルカからは想像もできない行動に、アリスは驚きを隠せない。
「えっと……ルカ……?」
「行っちゃ……だめ」
「え?」
更に腕の力が強まる。
(え?え?)
肩越しにルカの髪がさらりと落ち、吐息が耳をくすぐる。
「………あなたは、そのっ……非力すぎるから…」
懸命に伝えようとするルカの吐息が耳をさらに刺激する。
「………っ」
「あなたは……みんなに………触られすぎ」
「えっ………」
「あんなにみんなに……その…体を……触らせないで」
「?!」
何があったんだろう。
想像できない。
困惑していると、ルカが僅かに腕の力を緩めた。
「あなたは……無防備すぎる。次から、お酒の席は絶対……俺から離れないで」
「??……う、うん…わかった」
肩越しに覗き込む真剣なルカの顔に思わず頷いた。
「今日は、まだ入れ替わってることにして」
「………ええっ?!ど、どうして?」
ルカは腕を解くと、向き直って顔を覗き込んできた。
「入れ替わってることにしておけば……みんなあなたに触れないはずだから………」
(………入れ替わってる間に何があったのかな…)
不安に思いながらもアリスは頷いた。
「でも、ルカの誕生日なのに、ルカが『おめでとう』って言ってもらえないのは心苦しいな…」
入れ替わってることにしたら、みんなきっとアリスに向かっておめでとう、と言うはずだ。
するとルカは柔らかく微笑んだ。
「それでも、いい」
そして、そっとアリスの髪を撫でた。
「その代わり…欲しいもの、一つお願いして、いいかな」
「!!うん!何でも言って!」
(やっと求めていた答えが貰えそう!)
すると、ルカは顔を真っ赤に染めながら、アリスの耳元に唇を寄せた。
「……これから先ずっと…あなたのことを…守らせて下さい」
(…………っ!!)
耳まで真っ赤になっていくのがわかる。
守る以上の感情が
今のルカにあるのかどうかは
残念ながらわからなかった。
そして
再びひと芝居うちながら、二人はパーティ会場へ向かった。