第1章 ルカBDSS【知り過ぎた日】
(とりあえず……逃げよう!)
この体はかなり速く走れることが分かったアリスは、とりあえず走った。
「待て!」
しかし相手も屈強な体つきの男性だ。振り切ることはできない。
「どうした、黒のジャック。今日はご自慢の剣は抜かねぇのか!」
(抜いても使えないんだって!!)
心の中で叫ぶが声に出すこともできない。
「今日は独りだな?こりゃいい!ボコボコにしてやる!」
(どうしよ……あれっ?!)
適当に走っている間に、アリスは運悪く袋小路に来てしまっていた。
(やばい!!どうしよう!!)
振り返ると、勝ち誇った顔の男たちが迫ってくる。
「もうおしまいだな……、お前ら、行くぞ!」
リーダー格の男が声を掛け、三人は一気に襲い掛かってきた。
(もうダメだ…!)
アリスは縮こまって目をぎゅっと閉じた。
「待てっ!!」
男たちの背後から声がした。
凄んでいるが、女性の声だ。
「あぁ?!」
「何だてめーは!」
現れた女性は息を呑み、吐き捨てるように呟く。
「……っ、昨日のチンピラ…!」
「……ルカ?」
男たちの隙間から、自分の姿……をしたルカが立っているのが見えた。
「……その人に手を出したら…許さない」
「あ?引っ込んでろこのアマ!」
男の一人がアリス姿のルカに掴みかかるが、鮮やかに身を翻して避けると、そのままルカ姿のアリスの前へ、庇うように立った。
「はっ!黒のジャック様は女に庇ってもらうような臆病者か!」
(どうしよう…!)
「…アリス、剣貸して」
「えっ?これ?」
ぎこちない手つきで背中の大剣を抜き、アリス姿のルカに渡す。ルカは一瞬眉根を寄せた。
「……思ったより、重い…」
重みに耐えながら、アリス姿のままでルカは剣を構えた。
「おいおい、やんのか女ぁ!」
「……黙れ!」
ルカは全力で剣を握り男たちへ振りかざす。
力がなくても使い方を知っているせいか男たちは怯んだ。
しかし、致命傷を与えるほどの攻撃は出せない。
「……やっぱり、重すぎる」
息を切らしながら、アリス姿のままルカは相手を睨んだ。
「威勢の良さは褒めてやるが、ここまでみたいだな!腑抜けのジャック諸共潰してやる!」
(もうダメだ!!ルカごめん……!)
その時だった。