第1章 ルカBDSS【知り過ぎた日】
アリス side--------
魔法の効能が日没までと聞いて肩を落としながら、アリスはルカへの報告後、再びセントラルをとぼとぼ歩いていた。
(どうしよう……私の安易な考えのせいでルカに迷惑かけちゃったな…)
ルカの話によると、いつも誕生日当日は非番になっており、パーティの準備の間は兵舎から追い出されるのだという。
(でも…ルカと一緒にいないと、心細い…)
不安な気持ちを抱えたまま、どこへ行くともなく歩いていると、後ろから叫び声がした。
「ルーーカーーー!!!」
(……えっ?)
振り返ると、遠くから手を振って近づいてくる人影があった。
「……ヨナ!」
驚いて固まっている間に、ヨナはすっかり追いついて目の前にやってくると、勢いよく抱きしめてきた。
「ルカー!!」
思いきり抱きしめた後、ヨナがふっと顔を覗いてくる。
「……いつも避けるのに、今日はやけに素直だね」
(…しまった!忘れてた)
「さては………やっと反抗期が終わったんだねー!!さぁルカ!今日はお前の誕生日だろ?兄様が好きなものを何でも買ってあげるからついておいで」
(まずい……これはルカ的にまずい展開!)
「……ヨ、ヨナ!じゃなかった…えっと、兄様……じゃなくてえーっと……ば、ばか兄貴!」
言い直しすぎてしまい、すっかり破壊力のなくなった呼び名でヨナを呼ぶ。
「悪いんだけど…今日は黒の兵舎のみんながお祝いしてくれるの……だから、ごめんね!また今度!」
「えっ、ルカ?!」
勢いでヨナを振り切り、アリスは思いっきり走った。
「ルカ………反抗的じゃなかったけど、何だか様子が変だったな…」
ヨナは眉をひそめ立ちすくんでいた。
(……すごい、ルカってこんなに早く走れるんだ!)
しかも全然息が切れない。
妙なところで感心しながらアリスはヨナが見えないところまでやって来た。
「はぁ…とりあえず……帰ろうかな」
(部屋にこもっていれば問題ないよね)
これ以上誰かに会うリスクを避けたい。
アリスが黒の兵舎の方へと足を向けたその時だった。
「………てめぇ、黒のジャックだな!」
(え?)
振り返ると、強面の柄の悪そうな男が3人ほどいた。
「昨日はよくもやってくれたな!」
明らかにマズい展開にアリスは息を呑んだ。