第8章 Dear 神田切甘裏【幸せですかの続編】
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「へえ…この辺りが故郷なんですか」
「ええ。久しぶりに室長からお休みを頂いたんで、この桜を見に来ようと思ったのだけど…ちょっと早過ぎたかしら」
近くのベンチに腰を下ろし、そんな他愛ない話に花を咲かす。
「みんなは元気ですか?」
「元気過ぎて毎日忙しそうよ。
ただ、あなたが教団を抜けて若い子達は淋しがってたわ。
特に、リナリーなんかはね」
「そうですか…」
リナリー…
私の1番の友達だった。
でも、彼女にすらあの事の相談出来なかった。
もし、話してたら何か変わったかな…
「ユウも…元気ですか…?」
つい、聞いてしまった。
慌て口を閉ざし、ちらりと婦長を見ると、どこか悩むように眉間にシワを寄せていた。
「神田君の事なんだけどね…」
「ユウが…どうかしたんですか…!?」
悪い予感がして、身体ごと婦長を向く。
婦長は最初、私から目を反らしていたが、息を着くと、ゆっくり話し始めた。
「ユウが倒れた!?」
「ええ…五日前、任務先で意識不明になって、今は教団の医務室で眠っているの。
…彼、あまり見てないけど、最近やつれていた気がしてたの。
けど、心配要らないとか言って、仕事してたわ。
…眠っている間、あなたの名前を何度も呼んで、うなされていたわ。」
頭が真っ白になった。
私のせいだ…
「私のせいで…」
「そういえばあなた達、恋人だったのよね?どうして別れたりしたの?」
ビクッと身体が跳ねた。
怯えた様子で婦長を見ると、心配そうな顔があった。
「何かあったの?私でよければ話してくれないかしら…」
私はしばらく考えた後、重い口を開いた。